いなばの◯描きブログ

遠野の漫画練習blog

睡眠の質から追放された管理人は、眠れないのでリトに自分語りをしてもらう

睡眠。
それは心と身体の健康を(にな)う存在。
ゆえに不眠症とは悪である。

 

「なにこの冒頭文…」

 

俺は渡されたカンペを見て半分呆れた。
あぁ、そうだ。ひとまず自己紹介をしておこう。俺の名前は米斗(こめと)理人(りと)

『召喚された料理人は、女神に魔王の肉が食べたいと言われて世界を救う』だったか?何かやたらと長いタイトルの主人公だ。

リトと呼んでほしい。


ちなみに余談だが、本当はタイトルに「リトの魔物飯」とつけたかったらしいぞ。
だけど、郷に入れば郷に従え。流行りの長さを取り入れたそうだ。
まぁ、正直タイトルは簡潔なほうがカッコイイもんな。俺もそれはわかるよ。


で、冒頭の話なんだが。

今日は管理人の遠野は休みだ。なんでもひどい不眠症で、頭が朦朧としているらしい。定期的に睡眠薬を飲ませないと眠れない体質なんだとか。特に夏。今の季節は昼夜逆転するんだと。

え?仕事はどうしてるのかって?
それはあれだな。触れてやるなといいたいところだが、まぁ職探し中というやつだ。

というのも、馬鹿な話だがアイツは漫画家になりたいんだよ。そんで少し前に会社を辞めて、貯蓄削って一時期頑張ってたみたいなんだが、芽が出ない。バイトをしても不眠症だからな。あと、あんまり離職の期間が長いと、バイトでさえ雇って貰えないから、そこはみんなも気をつけたほうがいい。

と、まぁ長い前置きはこの辺にして本題だ。

 

「えーと、なになに……自分の代わりに悩みを話せ……才…が?なに?なんか字が汚くて読みにくいんだが、このカンペ。しかもごちゃごちゃしてるし」

 

あー、要するにだな。つまるところ、遠野には才能がない。
漫画家になりたいと思ったのも、生きた証を遺したいなんていう理由だから、特別絵を描くのが好きだったわけでもないらしい。
実際、漫画を描き始めた頃の画力は幼稚園児レベル。棒人間ですら描くのが危うく、関節の概念がなかったんだと。
最近になって、ようやく人の形が描けるようになったそうだが、まだ手とか指とか細かいところは苦手らしいな。


しかも背景に至っては、パース何それ状態だ。まぁコイツは学生の頃、数学Aと歴史が赤点だったからな……空間把握が苦手なんだろ。


それでだ。そんなヤバい画力の中、原稿を完成させ、何回くらいだろうか。出版社には送ったが、当然ながら落ちるよな。
だから昨年からはネーム賞に専念することにしたらしい。漫画の作画は出来ずとも、原作者として、自分の考えた話が漫画になって、アニメになって動いてほしいんだと。

なんというか、ずいぶんと夢みてんのな。俺だって天下一の料理人になるぜ!とかは言わんぞ?せいぜい店に来た客が、俺の飯を笑って食ってくれれば、それで構わない。
……て、同じか。こいつも人の笑顔が見たいっていうのが強いしな。

 

「次は、あー……なるほど」

 

俺も経験あるけど、何度も落ち続けると気づくわけだ。自分には才能がないと。
俺も師匠から合格が貰えなくて、何で飯作ってんだろって悩んだことがある。
こいつの場合は、一向に上手くならない絵と、流行りの話を考えることに疲れたんだな。
そもそもこいつの好きな絵柄や話って少し古いんだよ。流行に合わせないといけない、自分が好きなものと違うってのは結構大変なんだ。


料理にも、やたらイン●タ映えする人気店ってあるだろ?
確かにそういう店はお洒落だ。客も集まる。みんながうまいって口コミに書く。

でもな、それ本当か?

確かに多くのやつにとっては、その店はうまいんだろう。でも俺の舌はそうは感じなかったら?もっといえば、豚骨系のラーメンが好きなのに魚介ベースのラーメン出されて、うまいけど、なんか違うな……ってあるだろ。同じ醤油でも。

だけど、世間では魚介ベースが流行っているからと俺の店でも出す。どうだ?

自分が心底うまいって思わないのに、客にそれを出すんだぞ。結構、心が痛むよな。

 

それでも、客がこなきゃ店は潰れる。だから集客は必要だし、客が魚介(それ)を求めてるんだ。心に反しても、それを出さないといけない。

金を払ってもらう以上、相手のために作る。その胃袋を満足させることは当然の理だ。それで食ったやつが喜んでくれたら、まぁいいかってなるけど、やっぱり虚しさは募るさ。

結局、利益を取るか、想いを取るかってのは難しいもんなんだ。そりゃあ、そんな板挟みを長く続けてたら、心にくるものはあるよな。

 

あぁそれといちおう言っておくが、俺は魚介も豚骨も好きだから、今の話は例え話だ。誤解すんなよ。ちなみに塩が好みだ。

 

「でもそんな悩みは、なにかを作るひとにとっては当たり前のことだ……か」

 

まぁそうなんだが。でも、コイツに限っては何か熱意の方向性がおかしくてな。

主人公が頑張っているのに、それを書く側が頑張らなくてどうする。
たとえそれが報われなくても、主人公に恥じない自分でいなければ。

誰かに夢を語るなら、自分が夢を信じなければ!


と、なんか熱い想いを燃やしてるらしいぞ。

悪い。俺は別に何も頑張っていないんだが。まぁなんだ。なんでもいいが、とりあえず眠れ。まずはそこからだ。身体がついてかないと、頭も働かないと俺は思うのだが。


「お、やっと終わりか」


こいつ曰く。
正直もう書きたい話が出来てしまったから、商業はもういいかな。とのことだ。

……え?なんか話の脈絡おかしくないか?

生きた証を遺すため、世にでるものを作りたいんじゃなかったのか?そうしたら、安らかに最期が迎えられるとか言ってなかったか?重い話なんだが。
ところでその、書きたい話って俺が異世界で店を開いた話かな。

 

「お、続きが書いてあった」

 

カンペをめくる。

 

「商業は生活もあるから頑張るけど、ゼノの話を書き終えたら、もうこの世に未練がない」


あー……うん。寝不足だからな。ちょっと意見が極端になってるな。
つーか、俺の話じゃないのかよ!


「はぁ……そんなわけで、最後に遠野からのコメントだ」

 

────酷い不眠症の解消があれば、誰か教えて!→


はい。誰か、こいつに良い睡眠法を教えてやってほしい。あ、子供が見ても大丈夫な内容で頼む。あと道路整備とか肉体労働しろって話も無しな。コイツ陽のしたに出ると、蕁麻疹が出るらしいから。


じゃ最後の最後だ。
俺の出てる『召喚された料理人は』……長いから普通に『リトの魔物飯シリーズ』でいいか。

カクヨムにあるから、ぜひ見てくれよな!

kakuyomu.jp