リィグ「『妖精国の語りが眠い件について、語り手さんに聞いてみた。へい、語り手!もう少し楽しく語ってくれませんか?』」
妖精国語り手「…………」
リト「いや無理だろ。三人称相手にそれは聞くなよ」
リィグ「『そうなんだけど、笑いが欲しいんだよ!』」
リト「あっそう……って、なにこれ。俺はいまどこにいて、何をやらされているんだ?しかも謎の空間に見知らぬ奴らと三人とか。また遠野がバカやってんだろ」
リィグ「あー、なんでもね。本当は君といなばちゃんの会話形式だったらしいんだけど、途中で恥ずかしくなって、君と僕のコラボレーション?にしたらしいよ。あ、僕の名前はリィグ。よろしくね、リトくん」
リト「なるほど、事情は概ね理解した。お前の存在は知っていたが会うのは初めてだな。よろしくなリィグ。えーと、そっちのフードの人は……」
妖精国の語り手「……」
リィグ「ああ、ごめんね。物語の語り手さんは存在するけど存在しないのがメタセオリーだから、ひとまず無言形式ってことで。僕たちの会話には入ってこないから、そういう方向でお願いするよ」
リト「わ、わかった。何だか監視されている感が否めないが……ところで、名前がどっちも『リ』で始まるせいで、ぱっとみ分かりにくい。そっちのほう『──』でいいか?」
──おーけー!じゃあ、リィグ通信形式でいこっか。はい、それじゃ議題そのいち。『やっぱり妖精国の語りって退屈だと思う?』
リト「……悪い。まずは経緯を説明してもらえるだろうか?唐突すぎて意味がわからんし、急に背景が庭…?に変わったんだが。つうか初対面なのにコミュ力高いな、この人。しかも語り手さん自由すぎんだろ。勝手に花眺めに行ったぞ」
──この景色はお城の薬草園。あと僕は人じゃなくて星霊ね。経緯はブクマ?とかいうのが増えないから、文章が読みにくいのかなーって。あ、そこのテーブルに座ってて。いまお茶を出すから。
リト「おう、悪いな。しかしそういうことか。またくだらないことで悩んでんだな遠野は。単に流行りと運の問題だと思うが。そもそも素人が書いたもんに誰も文才なんか求めていないと思うぞ」
──そうなの?僕は本とかあまり読まないからわからないけど、本人曰く『小説の地の文は漫画で言うところの絵だから、ある程度の画面の分かりやすさは大切だと思うんだよ』って台本に書いてあるよ?
リト「は?台本あんの?俺は貰っていないが……。まぁいい、続けてくれ」
──『魔物飯やがおがおはコメディ調だから読んでて笑えるけど、妖精国は語る人に遊び心が無いよね』って。はい、お茶。
リト「どうも。ん……そりゃあ語ってるやつが真面目だからな。景虎んとこと比べたらノリの面では負けるだろ」
──そうだね。あっちはノリのいい天の声さんだもんね。それに比べて、僕のところは静かな語りというか淡々としてるとゆーか、もうそのまんまだよね。確かに説明は丁寧だけどさ。
リト「まぁ妖精国は魔法が出てくる世界観だからな。いろいろと設定語りが必要なぶん、多少の窮屈さはあるんだろうさ。でも俺から見れば、だいぶ噛み砕いて説明してんなとは思うよ。そういうのって案外伝えるのに苦労するから」
──だよねー。話はするする入ってこないと飽きちゃうし、その点、うちの語り手さんはけっこう頑張ってるよね。えらいえらーい。
リト「すげぇ投げやりな褒め方…。後で怒られても知んねーぞ。で、なんだっけ?語りが退屈かって話だっけ?」
───そうそう、眠いのかなーって。
リト「眠い?そのへんの感覚は人それぞれだろうが……まぁ話のテンポは遅いよな」
──テンポ?
リト「ああ。Webでは展開の早いものが好まれるからな。魔物飯のようにコメディかつサクサク進むやつならともかく、妖精国は全体的にシリアスだろ。進みも遅ければ、文章量も多い。それは紙向けであってWeb向けじゃない。しかも妖精国は文章が硬いしな」
──硬い?そうかな?普通だと思うけど。
リト「いや、硬いよ。本ってのは疲れてても難なく読めるレベルが望ましい。学校や仕事で疲れて帰ってきたところに難解な文とか出されてみろ。息抜きどころか脳の疲労が増す。専門書ならともかく娯楽向けなら読みやすくしてくれ、頼むから……というのが、たびたび読書感想文に泣かされた、かつての遠野の叫びだ」
──あー、夏休みのトラウマだね。
でもまぁ、それはかなり極端な意見だと思うけど、確かに疲れてる時や体調が悪い時にでも読める本はありがたいよね。マスターも50度くらいの熱があるのに内容が頭に入らないって文句言いながら、魔導書を読んでたことがあったよ。夜だったし、寒いからって書庫で火を焚いてたら、見まわりに来たおじさん(警備兵)に心配されてたっけ。
リト「それは休ませてあげて」
──つまりまとめると、もっと展開を早くして、柔らかい言葉を使おうってことでいいのかな。うーん、なかなか難しいところだね。
リト「いや、あくまで今のは俺個人の意見だ。作風にもよるし、多少の意識程度でいいんじゃないか?むしろ魔物飯のノリでやられても、それはそれでキャラが崩壊するだろ」
──そうだね。そのノリで語られたら僕もびっくりするかなぁ。ひとまず展開については今後に期待ってことで。あとは?他にはある?
リト「他?あー、そうだな……画面の作り、かな。ずっと主人公の視点で話が進むからゲームやってる気分になるつーか、単調というか。たまには他の奴からの視点も入れたほうがいいと思うぞ」
──視点かぁ。そのことなら本人も気にしてるみたい。ちょっと待ってね?えーと、『物語全体を見せるなら色んな角度からにするけど、あくまでゼノの生き様を描いた話だから視点は固定してる。なのでゼノが好きじゃないと単調に感じるかも。もちろん番外編や、どうしても必要な箇所は他の視点も入るよ』だってさ。
リト「ふーん。そういうことなら別に文句は言わんが、結構リスキーだよなぁ、それ。もっと安全牌拾いにいけよ」
──りすきー?
リト「危ないって意味。そうだなぁ、例えばキャラ人気ってあるだろ?そのキャラが好きだから、その本を手に取るみたいなやつ」
──あー、いるね。ごく身近に。
リト「だろ?でもって主人公ってのは作品の顔だ。だから主人公には親しみやすい奴が多い。読者からも、その世界の住人からも好かれやすい性格に設定されている。だが、ゼノはどうだ?あいつはクソめんどくせーし、あれに感情移入しろと言われたところで俺にはまず無理だ。合わない主人公の時点で読むのがキツいのに、その視点がずっと続くとか…。せめてお前やヒロインの視点が交互に入る形なら読みやすいと思うんだがな」
──ずばっと言うね。まぁそこは好みじゃない?さっきリトくんが言ってたキャラ人気じゃないけれど、その視点主がどれだけ好きかで読み進める人もいるわけだし。結局、展開の早さとか文章云々よりも、その物語と登場人物にどれだけ興味があるかで退屈さが決まると思うよ。
リト「急にまとめてきてな」
──うん。次のお題があるからね。そういうわけで、ここは無難に『好きな主人公、もしくは好きな登場人物がいれば読んでて楽しい』でいいかな?台本にもそう書いてあるし。
リト「待った。…え?次のお題ってなに?」
──2番目のお題だよー。内容は『妖精国の魅力と欠点』
リト「いやいやいや。嘘だろ?これ、まだ続くのか?こんなくだらない話に付き合わされるとか……。俺そろそろ店に戻りたいんだが…」
──まーまー。ほら、いなばちゃんって創作友達とかいないじゃん?だから考察とかいつも1人でやってるから、たまには他の人の感想を聞いて、新しい気づきが欲しかったみたいだよ。それで僕や君の意見を聞かせてほしいってことで、この場を用意したそうだから。
リト「いや、これ全部遠野の脳内トークだよな?」
──はい。じゃあ次。まずは資料から。どどん!
──語り方の次は中身の考察。議題その2『妖精国の魅力と欠点』。さっそくいってみよー。
リト「ええ…俺帰りたい。しかも、そんなノーテンションで『いってみよー』って言われても。実はお前も飽きてきただろ、この会話に」
──いやいや飽きてはいないけれど、話相手が君っていうのがね。せめてフーディちゃんなら楽しかったのになー。
リト「フーディ?いやー、あいつはやめといたほうがいいと思うがな。そういう俺だって、そっちの……リーア姫だっけ?あの子かミツバ姫あたりがよかったよ」
──だよねぇ。僕もそう思う。でもまぁ、ここでぐたぐだ言ってても仕方がないし、話をすすめようか。
リト「はー、…だな。それで?中身の考察って何をすればいいんだ?」
──えっとね。ひとまず魅力についてだけど、上の資料にある通りかな。だからここは最大の魅力を……っと、あった。『一番の魅力はゼノという人物。誰しもいろいろなことを抱えて生きているけれど、どんな道を辿っても最後は笑って暮らせることが一番だと思う。そういう願いをこめて描いております』以上。
リト「重……」
──けっこう深いテーマだったね。もうちょっと誰にでも分かりやすい魅力を作ったほうがいいんじゃないかなって僕は思うけど。
リト「だよなぁ。普通に主人公が敵ぶっ飛ばす様がかっこいいとか俺つえーとかさ。それで良くないか?」
──うん。あとは頭脳戦もいいよね。あっと驚くような展開とか。僕、頭のいい主人公好きだなー
リト「それは無理だな。遠野が考えられないから」
──えー、でもマスターは頭がいいっていう設定だよ?まぁだいぶ抜けてるところがあるし、いまはまだちょっと本腰じゃないけどー
リト「出たよ。俺はまだ本気出してないからってやつ?やめてくれよ。そういうの決まって死亡フラグだからさ」
──あー、そーいうこと笑って言うと、リトくんにフラグが立っちゃうよ?
リト「すみませんでした。頼むから笑えない冗談はやめてくれよリィグ。……と、まあ魅力はもういいから次いくぞ次。えーと、欠点の項目にある定石?を、外しているってのはなんだ?」
──全部で3つあるみたい。けっこう長いけどいい?
リト「わかった。じゃあこれで頼む」
▶長いから割愛
その壱、主人公が主人公らしくない。
物語の主人公は基本的に活躍する主人公じゃないと退屈する。(ラノベや少年漫画基準)
主体性があって、自分で物事を解決する力。誰かを導くまっすぐさ。学校でいうところのクラスの人気者みたいな人か、普段は目立たないけれどちゃんと自分を持っているような人が望ましい。
だけど、序盤は殆どゼノが流される形で話が進むし、能力面も劣っている。中盤以降も活躍は少ないし、俺ツエー感も無い。そもそも本人が相当の変わり者だから、読者が共感できるかという点で難しい。
その弐。ライアスが完璧王子。
ラノベでは男女のバディものが多いが、肝心のヒロインはお留守番。せめて王子を姫にするのが定石。
漫画なら王子でもいいけれど、片方が完璧設定なら、もう片方が成長していく系じゃないとドラマが生まれない。大抵は年齢が上のほうが導く役になるから、この場合はゼノが未熟なライアスを引っ張るのが王道。もしくは、逆に完璧な王子を支える従者(ゼノ)が成長する物語でなければいけない。それなのにふたりとも成長がない。
その参、物語が平淡。
泣けたり笑えたり、主人公すげぇとか、そういうのが一切なく、話が淡々としているところ。
また、最近のトレンドは一話完結型であり、どこから見ても話がわかって、その回でまとまっているものがいいから、長期的なストーリーは受けにくい(と聞いた)。
あと、連載を綺麗にまとめるのは相当な実力が要る。
リト「はい。……長いよ。お前の話はいつも長いんだよ。そして俺が既に言ったことと内容が一部被っている!よって、ここはカットさせてもらった。気になる奴は▶を押してくれ。そんで以下が簡略した欠点の項目だ。
その壱、ゼノが主人公らしくない
その弐、ライアスが完璧王子
その参、物語に起伏がなく平淡 以上」
──あはは。リトくんも容赦がないねー。ライアス王子みたい。あ、ちなみにここの省略タグだけど、『<details>と<summary>を使用しました。はじめて使ったけど、気に入ったから今後も使いたいなー』ってコメントが添えてあるよ。
リト「添えるなよ。誰得でもなさすぎるだろ、その情報」
──さて。どうしようっか?ここをそんなに掘り下げたところで、つまんない話になりそうだし、僕としてもコメントに悩むね。
リト「要らないだろ。欠点の話とか。つーか魅力の部分よりも長いし」
──まぁ、人からの意見を聞いて改善したいっていう主旨も含んでるからね。この対談。ここは第一章を読んだ感想でいいんじゃない?
リト「感想?あー、そうだな……これといって、続きが読みたいとは思わなかったな」
──まさかの厳しい意見!なんで?
リト「普通に心が惹かれないから。ゼノが活躍しなくて読んでてワクワクしない。あと読めばわかるが、第一章の構成がおかしい。宝剣を探しているはずなのに、途中でライアスの兄貴(サフィール)との対立に変わるし、しまいには変な組織が出てくるしで、話が飛びすぎじゃね?と思ったね」
──ああ、それね。たしかに剣の話、どこいっちゃったの?って感じではあるよね。
リト「そうそう。話の組み立て方つーか、転がし方?遠野はそれがうまくないんだろ。だから変にグダクダしてんだよ」
──そこで欠点その参の補足なんだけど、なんでもそんな展開がダラダラと続く長編ものだったらしいよ。具体的には十章以上も。
リト「まじで?」
──うん。まじ。一応台本の内容をそのまま読みあげると、『スロースタートで主人公の記憶が戻るのも遅く、流石に書いている自分も辛いから、その件は終盤から中盤に、さらに第一部の終わりにまで持ってきた。でもそれだってそのあとも淡々とゼノの軌跡を追っていく話だから、まずストーリー映えはしないよね。それから……』って、へー、こういう感じなんだ。だいたいは僕も知ってるけど、初めて聞く話もあるね。
リト「登場人物が台本からネタバレを知るというカオス。つか、記憶?あいつにそんな設定あったっけ?」
──あったよ。さらっとだけど序盤に書いてあるよ。養父に拾われたときに何もわからなかったーってところ。
リト「ああ、あれか。あの一文から察するとか無理だから、もっと分かりやすく書けと言いたい。……あーいちおう聞くが、記憶が戻ったあとは最強ものにシフトするのか?こういう場合、封印されし何だとかで、あとでチートに目覚めるのがお決まりパターンだろ?」
──ちーと?無いね。記憶が戻るのも少しだけだし、能力的にも変わらないから、人によってはモヤモヤが増すかもだってさ。
リト「大丈夫、わかってた。遠野だからな。それでもあえて言うが、普通に駄作の書き方だから俺は推奨しない」
──そうなの?
リト「ああ。詳しくは面倒だから省くが、簡単に言えば、それは読み手を考えていない作りかたってことだ。退屈な話を相手に永遠と聞かせる。リアルな人間関係でもそうだが、これをやると間違いなく相手に嫌われる。つまり……いますぐ書き直せ!そんな駄作を作ってどうする!ひとりでも多くの奴に見てもらいたいだろ?だったら質をあげろ。それから人との交流を持て。何でもそうだが、コミュニケーションがどんな世界でも物を言う。よって──」
──おおっと!まーまー、リトくん落ちついて?今更だけど、お菓子も出すからさ。これ食べてのんびりしよーよ。
リト「ええ……ここで話の腰を折るなよ、リィグ。しかもそのクッキーは一体どこから……」
──その辺にあったよ。ケーキもあるけど食べる?
リト「お、じゃあ俺、苺のショートケーキー♪……ってわざとだろ!お前いまわざと俺の話そらしてるよな?」
──だってお説教モードに入りそうだったんだもん。確かにリトくんの気持ちもわかるよ?僕だって早く帰ってマスターの手伝いがあるし。だけどさ、いなばちゃんもかなり頑張ってるみたいだから、そこは許してあげてよ。なにより現場の雰囲気は見る人にも伝わるし、ここは楽しく行こうよ。はい、苺のショートケーキ。
リト「ありがとよ。はぁ……お前達観してんのな。そのコミュ力の高さをアイツらにわけてやってほしいよ」
──はいはい。あ、紅茶のおかわりいる?
リト「もらう。ところで、そっちの語り手さん。気づいたら向こうのテーブルでひとりで茶、飲みながら本を読んでいるんだが。なんでこっちに来ないんだ?」
──僕と君の対談を邪魔しちゃいけないと思ってるんじゃないかな。語り手さんなりに空気を読んだ結果だと思うよ。
リト「あ、そう。じゃあ、その心遣いをありがたく頂戴するとして話を戻すが……なんだっけ?展開がどうのと話していた気がするが」
──構成の件だよ。話の転がし方がうまくないよねーって話。
一応そのあたりは本人も自覚があるから、さっきも話したように展開を早めたり、緩急つけたり、全体的なシナリオを崩さない程度に都度改善をしているみたい。ただ、見直しの過程で第1章に入れたいエピソードが出来たから、ちょっと追記するってさ。
リト「ふーん。まあ、そのへんの内部事情は好きにしてくれって感じだが…、今後の更新スケジュールはどうなっているんだ?」
──『2月に第2章開始。そのあいだに第3章の執筆と、第1章の大幅改稿。春頃に1章の改稿版をのせて、梅雨頃に3章を開始。……できたらいいね!』以上。
リト「最後願望かよ。つか1章、追記じゃなくて改稿すんの? しかも大幅改稿って…それ必要か?」
──うーん。まあほら、全体的に少しぐだくだしてるしバトルも長いからね。そこを削って追加のエピソードを入れたいそうだよ。あとは読者さんがわかりやすいように、序盤と閑話の時系列を入れ替えたり、3章のラストに向けて違和感のない流れに修正したいそうだよ。
リト「あー……、そうだな。確かにあんまり長すぎるバトルはだるいし、そこを直すことには賛成だが…入れ替え?は、なぁ…。それをやったら冒頭映えしなくないか?」
──まぁね。だけど、いまの形だと小説としてはいまいちなんだってさ。
リト「いまいち?どこが?」
──小説の基本は一冊完結型。最初と終わりが繋がっていて、推理ものでいうと、事件が起こって真相がわかるまでがセット。漫画のように次巻で犯人が判明!っていうようには作れないんだってさ。
それを知ったのがつい最近だから、1章をシオン王子で始めて、それで終わるような作りに直したほうがいいのかなって悩んでるみたい。あと、絵じゃないぶん、時系列が飛ぶと話がぶつ切りになっちゃうから、読者さんにとって読みにくいのかな……とか、色々と悩みがあるみたいだね。
リト「………わかった。盛大に悩んでいることだけは理解した。だが、流石にそんな全体的な改稿は──」
──ちょっと頑張りすぎだ、かな?
リト「そうそれ。正直、書籍化の話でもあるなら話は別だが、そうじゃないなら時間が勿体ない。とくに遠野には時間が無いわけだし、先を書くことに専念して、必要な箇所だけ加筆と修正を加える。で、いいんじゃないか?どうしてもっていうなら止めないが、完璧を求めると切りがないぞ」
──だよねぇ。僕もそう思う。ちゃんと1章の欠点を踏まえて、2章からはかなり改善がされてるし。そこまで気にしなくてもーって思うけどな。
リト「な。そもそも人間、完璧なもんなんか作れねぇんだし、とりあえず好きに書けよ。んで、仕事になったら必死にやる。それで充分だって」
──うんうん。
リト「それから展開がーとか、欠点がーとか、さっきからうるさいが、悪い点よりいい点に目を向けろよ。駄目なところをつつくより、それを上回るくらい、いいところを伸ばせ」
──お!リトくん、いいこと言うね。じゃあここで僕からも、いなばちゃんに一つアドバイス。欠点の裏返しは美点だよ。つまり今までの話はこうも取れるよね。
その壱:マスターが主人公らしくない→まわりの人が主人公としての役割を担っている。もしくは癖の強い主人公ともとれるよ。
その弐:ライアス王子が完璧設定→それはある意味不完全だし、その苦悩も問題も描くことができるね。
その参:展開がのんびりかつ平淡→じっくり丁寧にお話が書けるね。それに起伏の少ない話が好きな人もいるはずだよ。
リト「ほう、いい切り返しだリィグ。褒美として、俺特製スペシャルデザート ~ケーキを分解して、それっぽく器に盛ったらプロ顔向けのトワイフルができたんだが。俺、天才じゃね?~、をやろう」
──わーい!って、ごめん。それ褒めたほうがいい?
リト「……ごほん。そういうことだ遠野。お前はなんにでも全力を出しすぎる。だから正月早々デスゲームになってんだよ。たまには手を抜くことを覚えろ。──つーことで、はい解散~。さようならー」
──おーっと駄目だよ、リトくん。まだ尺が残ってるから、もう5分くらい待って?
リト「ええ…尺って……録画でもしてんのかよ。これ」
──比喩だよ比喩。ほら、紅茶のおかわり出すから座ってよ。
リト「いいよもう、だいぶ飲んだし。……はぁ、だいたいこんな下らない作品語りに付き合わされる俺の身にもなってくれよ。そういうところだぞ、遠野。一方的に話を聞かされる苦痛。さっきも言ったけど、お前だってよく知ってんだろ?」
──はいはい、怒らないの。それにマスターだって言ってたよ?『たとえゴミみたいな相手の自慢話にも、相づちうって笑って返すのが宮廷勤めのマナーだよ』って。だから、ここは我慢我慢。
リト「ゴミって…お前。そういうところじゃないのか?そっちの主人公さんが人から好かれない理由って…。そもそも俺、アイツのこと苦手なんだよなぁ。たぶんそれで読んでても退屈っつーか、つまんねぇなーって思うんだろうな妖精国の話」
──お、序盤で話してた『キャラの好き嫌いで物語を読むか決まる』ってやつだね。
リト「それ遠野な。俺は全部読むから。……しかしさ。純粋に疑問なんだが、あいつはこれ読んでて楽しいのか?俺にはいまいち理解できん」
──うん。楽しいみたいだよ。何度も読み返して、リーアちゃんが可愛いなーとか、ここのシーンが面白いなーとか、ひとりでよくニヤけてるって、台本の一問一答欄に書いてあるし。
リト「嘘だろ?」
──本当だよ、見る?
リト「そっちじゃねぇよ。つか、一問一答欄ってなに?馬鹿だろ、やっぱ」
──まーまー、それで?そっちじゃないっていうのは?
リト「ひとりでよくニヤけてるってほう。普通に端から見たら怖いだろ、それ」
──そう?いいんじゃない?それだけ僕たちのことが大好きってことでしょ。嬉しいと思うけど。
リト「ええ…。俺は重くて勘弁だな」
──まぁ、いなばちゃんにとって物語の世界が現実だからね。それに本人曰く、『その世界に生きている人たちが好きだから、その軌跡を描きたい。創作というよりも歴史の記録をしている』って感じだから想いが強いんだと思うよ。
リト「それはホラーという認識でいいんだろうか?」
──あ!そろそろ終わりの時間が来たね。もう締めなきゃ。ひとまず妖精国の語りは眠くない。好きな登場人物がいれば楽しいよ。そして、そんな面白さいっぱいな妖精国をよろしくね☆
リト「すごく強引にまとめたな。というか、いままで居た薬草園とやらが消えて、冒頭の謎空間に戻っているんだが。これどーゆう仕組み?」
──細かいことは気にしない。所詮はメタだからね。それじゃ、ばいばい~
……うーん、だいぶ疲れていますね。なんかもう深く考えずに書こう!第1章の改稿の件は終わり次第お知らせします。とりあえず2人がいうように、必要なところだけの加筆&修正にしようかなー。